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東京家庭裁判所 平成6年(少)4816号 決定 1994年10月12日

少年 D・I(昭55.1.25生)

主文

少年を教護院に送致する。

理由

(非行事実)

第1  少年は、通行人から金品を喝取しようと企て

ア  平成6年9月2日午後4時ころ、東京都中野区○○×丁目×番○○駅北口○○自転車駐車場において、通行人A(当時15歳)に対し、「パー券買ってよ。」などと言い、同人がこれを拒むや、「おまえ、いくら金を持ってんだ。正直に言えよ。」などと迫って金員の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ同人の身体等にどのような危害を加えるかも知れない気勢を示して同人を畏怖させ、よって、即時同所で同人から現金3000円及び財布1個(時価500円相当)を交付させてこれを喝取し

イ  Bと共謀の上、同月7日午後5時55分ころ、同都新宿区○○×丁目××番×号JR○○駅構内において、通行中のC(当時15歳)に対し、「パー券買わないか。」「いらねえじゃねえんだよ。買うんだよ。」「殴ってやろうか。」などと言って金員の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ同人の身体等にどのような危害を加えるかも知れない気勢を示して同人を畏怖させ、よって、即時同所で同人から現金1000円を交付させてこれを喝取し

たものである。

第2  少年は、中学2年時(平成5年)ころから、地元○○での不良交友が始まり同3年時(平成6年)になると、夜遊び、無断外泊、家出が繰り返され、野宿をしたり、不良仲間の家を転々とし、不良仲間から回ってくる正体不明のパーティ券を売って生活費に当てるという乱れた生活を送っており、保護者の正当な監督に服さず、自己の徳性を害する行為をする性癖があり、正当の理由がなく家庭に寄り付かず、不道徳な人と交際しており、その性格、環境に照らして将来窃盗、恐喝等の罪を犯すおそれがある。

なお、ぐ犯保護事件は、警視庁○○警察署長から、平成6年9月15日付け及び同月17日付けの2回にわたって送致、受理されているが(同年少第4816号、第4855号)、その経緯を一件記録に基づいて検討すると、少年は、同月14日東京都杉並区○○×丁目付近を徘徊中、警察官に保護され、翌15日保護者に引き取られ帰宅し、同日付けで1回目のぐ犯送致がされたところ、少年は前記帰宅後2時間余りで、再び家出し、保護者からの連絡を受けた警察官が、同月16日JR○○駅前で少年を発見保護し、1回目の送致事実に同送致後の事情を付加して翌17日付けで2回目のぐ犯送致を行い、同日観護措置決定となったことが明らかである。したがって、2回の送致事実は合わせて1個のぐ犯事件として処理するのが相当であり、前記第2のとおり認定した。

(法令の適用)

第1のアの事実 刑法249条1項

第1のイの事実 同法60条、249条1項

第2の事実 少年法3条1項3号イ、ロ、ハ、ニ

(処遇)

少年は、1歳時に実父母が離婚したことから、以後祖母に預けられて生育し、平成3年3月(小学5年時)から再び実母と一緒に生活するようになった。当時実母はその9年位前から同棲を始めていた内夫Dがおり、当初少年はDを実父と聞かされていたが、中学2年時にDが実父でないことを知り、躾け教育が十分できない実母と違い、几帳面で躾が厳しいDに対して反感を持つようになり、生活態度不良の少年に暴力で臨むDの叱責を恐れての外泊も行われた。

少年の実母は、病気がちで、精神的にも不安定で、内夫との関係もあって少年を十分受容できず、少年は家庭内で疎外感、不信感を抱き、家庭から逃避し、自由、気ままに過ごそうとする。しかし、不良仲間で勢力の強いものに利用されているとの思いもあり、不良交友に安住できる状況にもなく、情緒は不安定といえる。

その他調査審判の結果明らかとなった少年の年齢、性格、行動傾向、生活史、家庭環境、保護能力、非行性の程度等を総合考慮すると、この際は少年を施設に収容し、職員との日常的触れ合いを通じて情緒の安定を図り、基礎的生活訓練を施し、基礎的な学力を習得させ、健全な社会生活を送れるよう指導することが必要であると認め、少年を教護院に送致することとし、少年法24条1項2号を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 西村尤克)

〔参考1〕 平成6年少第4816号ぐ犯保護事件の送致事実

少年は、1歳のとき両親が協議離婚し、同人は埼玉県川越市に住んでいる祖母のもとに預けられ、祖母のもとで小学校4年生まで育てられ、その後、実母と同棲している男のもとに引き取られたが、男の暴力に耐えかね、無断外泊、深夜徘徊、家出を繰り返すようになり、このころ知合った地元の不良グループの先輩らと遊び惚ける生活を送るようになった。

少年は、中学校に入学してからも生活態度は改まらず、本年に入り、○○、○○を根城としているチーム「○○」のメンバーであり、暴力団○○系組長の息子と付き合うようになり、チーム作成のパーティー券を利用した恐喝をするようになり、そのトラブル等が原因で、本年8月23日ころから家出をし、野宿や悪仲間の家を転々とする生活を送っているものである。

少年は、保護者の正当な監護に服さないばかりか不道徳な者と交際し、自己の徳性を害する行為を続けており、同人をこのまま放置すると、少年の性格、環境等に照らして、将来、窃盗等の罪を犯すおそれが大である。

〔参考2〕 平成6年少第4855号ぐ犯保護事件の送致事実

少年は、1歳のとき両親が協議離婚し、同人は埼玉県川越市に住んでいる祖母のもとに預けられ、祖母のもとで小学校4年生まで育てられ、その後、実母と同棲している男のもとに引き取られたが、男の暴力に耐えかね、無断外泊、深夜徘徊、家出を繰り送すようになり、このころ知合った地元の不良グループの先輩らと遊び惚ける生活を送るようになった。

少年は、中学校に入学してからも生活態度は改まらず、本年に入り、○○、○○を根城としている不良チーム「○○」のメンバーである、暴力団○○系組長の息子と付き合うようになり、チーム作成のパーティー券を利用した恐喝をするようになり、そのトラブル等が原因で、本年8月23日ころから家出をし、野宿や悪仲間の家を転々とする生活を送っていたことから、犯罪的危険性を認め早期治療の必要性から、本年9月15日ぐ犯送致(在宅)し、保護者に引き渡されたにもかかわらず、同日深夜、悪仲間の家に行くため再度、家出をしていたものである。

少年は、保護者の正当な監護に服さないばかりか不道徳な者と交際し、自己の徳性を害する行為を続けており、同人をこのまま放置すると、少年の性格、環境等に照らして、将来、窃盗等の罪を犯すおそれが大である。

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